フェルデンクライスメソッド

体の力を抜くということ

力を抜くということ

力を抜いてください、とはよく聞くけれど、力を抜くって案外難しいことなのかも知れません。
フェルデンクライスを教えるようになってから力を抜いてください、という声掛けをすると、どういうことかわからない、というお声を聞くことが何回かありました。
自分自身、大きな怪我をして、その治療中に無意識に体中を固めてしまい、理学療法士さんから、そこに力が入っていない?と言われてはっとしたものでした。当時力を抜くということはどんなことなのかよくわかっていませんでしたが、そういわれて私が瞬間的にしていた行動はそこを下げてみる(敢えて言葉で表現するなら、です)ということでした。すると体がほぐれ楽になります。療法士さんにその前に入れていた力をもう一度入れてみて、と言われてもう一度そこを元のように力ませてみて、自分がどんなに体に力を入れていたのかが解り驚いたりしたものでした。

この療法士さんから聞いたことには人間の体の痛みは多くの場合力を入れて引っ張ることで自分が作ってしまうのだそうです。私はその当時怪我の後癒着してしまった右肩の術前。後方に外れてしまった右腕が又落ちないようにと思い切り力を入れて無意識に腕を守っていました。リハビリの時間になると療法士さんが病室を訪れ私の右腕を持ち上げてくれます。彼女のリハビリはとてもユニークで、さあ、腕に風船が付いていると思って、と声を掛けてくれます。
私は目を閉じて腕に風船がついて自然に持ち上がっていく様を想像していました。すると、彼女は私の腕を持ち上げ、ふわーっと風になびくように動かしていきます。ほんの 5,6分の事でしたがその施術後に私の右腕は信じられないほど軽くなり肩が柔らかくなっていて、癒着を取る手術前なのに腕がまるで術後のように沢山動くようになっていました。
力を抜くということはこの、風船が腕に付いているかのように、ということの実践なのだと思っています。そしてフェルデンクライスではこの風船がついて動かされるようなことをひたすらやっていきます。

最初にも書きましたが力を抜くって難しいことなのかもしれません。なぜなら前述の私のように力は無意識で入れていることが多いからです。無意識下でやっていることに気づくにはまずそこの部位に意識を向けていくしかありません。そしてそこを動かし周囲に伝わる動きの波をただひたすら感じていきます。そう、私の腕を療法士さんがなびくように動かしてくれたように。そのあと体には何が起きるでしょうか。こんなことを全身にやってみたら体中にどんなことが起きるのでしょうか。

私がフェルデンクライスを通して何回も体験してきたこと、それは、レッスンの全工程を終え立ち上がる前に持つわくわく感。そして力の抜けた体で実際に立ち上がると起きる驚き。まるで別人になって立ち上がったような、そんな感覚。そしてそれは立ち上がる前に想像していたこととは全く違っていたりするのです。だからフェルデンクライスは面白い!毎回毎回違う学びがあります。きっと私はこの体験を求めて一生フェルデンクライスをやりつづけることでしょう・・・。