フェルデンクライスメソッド

フェルデンクライスを使って奏でるシンギングボウルの倍音

シンギングボウルの倍音

シンギングボウルという楽器をご存じでしょうか。チベットの楽器で、日本に持ち込まれたのは1970年代。
日本ではまだ新しい楽器です。お仏壇の「おりん」をご存じの方は多いかと思いますが、シンギングボウルはその仲間のような楽器です。おりんは、木製の棒で金属製のお椀のようなものを叩いて音を出しますが、シンギングボウルは叩いたあと棒でお椀のふちをこすります。するとお椀から叩いた以上の大きな不思議な美しい音が奏でられるのです。これを倍音というそうです。

私は長年このシンギングボウルを自分で鳴らしてみたくてたまりませんでした。コロナで在宅活動が増えたある日、シンギングボウルについてゆっくりサイト検索してみました。ふちをこするだけと思っていましたがどうも演奏にはコツがいるようで、シンギングボウル演奏教室まであるようです。はたして私が簡単に演奏できるかどうか怪しくなってきました。しかも、どのシンギングボウルも結構なお値段が・・・。高いものを買って演奏ができなければ宝の持ち腐れだなあ、などと思っているうちにシンギングボウルを買わずに日が過ぎてゆきました。

ですが、先日とあるアジアンショップで可愛らしい小さ目のシンギングボウルを見つけました。お手頃価格のその可愛らしいボウルを見て、即買いたくなり、音を試そうと手に取ってグルグルとお椀のふちをこすってみました。が、どうしたことか一向に美しい音色が出て来ない!一緒にいた友人が何気にこすったところ、ぐわーーーん、と美しい音色が・・・。何が違ったのでしょうか。結局音を出せない私は、友人に全部鳴らしてもらって気に入った音色のを見つけレジに直行。お店の方にも演奏をお願いしたところ、こすり始めるや否や店中に大きな美しい倍音が響き渡ります。私はふたたび何が違うのかが全く分からなくなってしまいました。お店の方に演奏のコツをお聞きすると、ふちの外脇をこすること。そしてとにかく落ち着いて。とのこと。
きっと私は音を出そうという欲にまみれて落ち着いていなかったのでしょう。そしてこのとき私は、ふとフェルデンクライスの力を抜いて、という言葉を思い出していました。

帰宅後、気を取り直してもう一度演奏を試みてみました。何度か鳴らそうと試しましたが、腕に力が入っているのか時折スティックがボウルから離れてチィンと叩いてしまい、音が途切れてしまいます。ボウルのふちに沿って腕を回そうとしているうちにとうとう腕が凝ってしまいました。ボウルのお陰で筋肉痛になりそうでした。

その時また先程思いだしたフェルデンレッスンの余計な力を抜いて、という声掛けが脳裏によみがえりました。力を抜いてやってみたらどうだろうか、と今度はスティックを軽く持ってみました。根気よくぐるぐるとずっとこすり続けているとワーン、ワーンとボウルから美しい倍音が鳴り始めたのです。うわあ!!!感動しました。その途端、頭の中が音と感動で一杯になり、真空状態?に。
とても心地の良い瞬間でした。倍音はなかなか長く続かないのですが、練習するうちにだんだんと大きな音が出るようになってきました。
それにしても演奏するたび毎回思い出すのは無駄な力を抜いてください、という私の声掛け。そういえばフェルデンクライスに巡り合うまで力を入れてやった方がうまくいく、と思いこんでいることが沢山あったなあ、などとシンギングボウルに気づかせてもらいました。

因みにこのシンギングボウルは沢山で合奏すると音色に囲まれて涙が出るほどの感動だった、という話を聞いたことがあります。
今度機会があれば体験してみたいなぁ、と思っています・・・。