フェルデンクライスメソッド

リラックスするということ

リラックスしてください、とはよく聞くけれど、リラックスするのってそうやさしいことではない気がしています。
なぜなら脳は絶えず考え事をするようにできていますし、体には力を入れなければ仕事が出来ず、考えや力はリラックスに対して真逆の所作だからです。

私がスイスに住んでいたことは何回もお話してきました。皆さんご存じと思いますがスイスは多言語国家。公用語はドイツ語、イタリア語、フランス語、スイスロマーニッシュ。英語は公用語に入っていません。しかもドイツ語、イタリア語、フランス語はそれぞれスイス独自の方言に変わっており、オリジナルの言語とは相当違っています。ですから私はずっとスイスは言語の上ではとても不便な国だという認識でいました。幼いころ世界地図を広げ海外を夢見ながらスイスだけには行きたくないなあ、などと思っていた、その国に住むことになってしまったわけです。

スイスに住むにあたり、ドイツ語を多少習ってから行きましたが、私の習ったドイツ語は全く役に立ちませんでした。
始めのうちは必要なことが何一つわからず、車内放送もスーパーの表示も理解不可能。電子辞書に頼りきりの生活で、不便極まりない、と思っていました。ですが生活に慣れ始めたころの事、言葉がわからないことがかえって居心地よく感じている自分を見出したのです。

日本に居れば全てわかる周囲の言葉。スイスでそれらが全く分からないまま過ごしているうち頭の中から言語が消えていき、次第に自然の美しさや、鳥の声に感動を覚えるようになっていったのです。日本では感じることのない情動でした。そして不思議なことに私の体調は今までになく好調になり幸福感に浸るようになっていったのです。今思うとリラックスするとはこういうことなのではないかと思うのです。頭の中の余計な考えが減り、感動する側の脳が活発になる。
ですが言葉と共に暮らしているという現状の中でどうやってこの状態を作りだすことが出来るのでしょうか・・・。

人の脳はざっくりとですが左と右に分かれ、左の脳は考え、右の脳は感じるようにできています。左の脳内にはいつも考えが渦巻きおしゃべりで一杯。そしてこのおしゃべりは大体は悪いことからできているのです。ですから考え事をしている間人は不幸になりがち、リラックスも難しいのです。この左の脳の活動を抑えるには、右の脳の活動を活発にするしかありません。

何度も述べているように、フェルデンクライスレッスンは動きを感じるということから成り立っています。ですからレッスンを続けているとおのずと感じる脳である右脳が優位になってきます。こうしてフェルデンクライスのレッスンは皆さんをリラックスへと導いていくのです。

そう簡単ではないリラクゼーション。しかし、フェルデンクライスの動きは老若男女誰にでも出来るやさしい動き。ちょっと美味しい話だ、と私はいつも思っているのです・・・。